大学卒業後、社会保険労務士を取得し、会計事務所が母体のコンサル会社に入社。国内・国外を問わず企業の経営コンサルを始め、人事・労務に関するサポートに従事。携わった業務は、企業の労務管理体制から社会保険手続き代行までさまざま。退職後に会社を設立し、代表取締役に就任。企業の労務管理体制の支援などを行う。 シグマライズ社会保険労務士事務所
目次
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残業が多いことに不満を感じている人は多い
残業事情、大丈夫ですか?
- 周りに比べて残業時間が長い気がする
- もう少し残業の少ない会社へ行きたい
- 今の会社、もしかして違法なんじゃ…?
皆さんの職場の残業事情はどうなっていますか?会社や職種によって、残業時間はバラバラだと思います。そんな残業時間に対して、不満を持っている人は多いでしょう。
残業時間に対する意識は人それぞれで違う
残業時間に関しては難しい問題が存在しています。それは、残業が30時間で多いという人がいれば、100時間以上からが多いという人もいるからです。また、残業代が貰えるから残業したい人がいれば、別に要らないから定時退社したいという人もいるでしょう。
このように、残業時間に対する意識は人それぞれで違いがあるのです。
残業時間は「36協定」で規定されている
残業時間については、労働基準法第36条に定めがあり、企業が従業員に対して残業や休日出勤を命じる場合は、36協定の締結が必要です。しかし、36協定を締結すればいくら残業をさせてもいいわけではなく、最小限にとどめられるべきものとして規定されている点には注意しましょう。
▼36協定の詳細はこちら
1ヵ月の残業時間が45時間を過ぎると違法とみなされる
36協定において、基本的に1ヵ月の残業時間は45時間が上限となっています。
36協定における残業時間の上限①
- 1週間→15時間
- 2週間→27時間
- 4週間→43時間
- 1ヵ月→45時間
上記が一般的な労働者の残業時間の上限となっており、これを超えてしまうと違法とみなされます。週単位で自分の残業時間を見直してみるのをおすすめします。
1年間の残業は360時間が上限
1ヵ月の残業時間の上限は45時間でしたので、1年間では「45時間×12ヵ月=540時間」となると思う人が多いでしょう。しかし、その答えは間違っています。36協定が定める1年間の残業時間の上限は、360時間です。
36協定における残業時間の上限②
- 1ヵ月→45時間
- 2ヵ月→81時間
- 3ヵ月→120時間
- 1年→360時間
単純に月単位で45時間ずつ増えていくわけではなく、特別な計算式が用いられて算出されていますので注意しましょう。
特別条項付き協定を結ぶと残業時間を増やすことが可能
月45時間の残業ではどうしても足りないという場合があると思います。そのときは、「特別条項付き協定」を結べば、残業時間を増やすことが可能になります。
しかし、特別条項付き協定を結ぶには複数の要件を満たさなければなりません。
上記の要件を満たし、特別条項付き協定を結べれば、月45時間を超える残業を命じても違法にはなりません。
特別の事情は「臨時的なもの」に限定される
3の特別の事情は、「臨時的なもの」に限定される点には要注意です。臨時的なものとは、一次的または突発的な事情のことを指し、例えば機械トラブルや大規模なクレーム対応、納期のひっ迫などが挙げられます。
恒常的な業務における残業のケースは、認められるのが非常に難しいといえるでしょう。
長時間の残業は「過労死ライン」認定される
長時間の残業は、健康に悪影響を及ぼすリスクを高めてしまいますので、厚生労働省は「過労死ライン」というものを定めています。仮に過労死が発生してしまった場合は、当該疾病の原因の究明や再発防止対策の指導が入ります。
具体的な過労死ラインの基準について見ていきましょう。
▼過労死ラインの詳細はこちら
80時間以上の残業によって健康障害が出ると労災認定される
過労死ラインを超えた残業によって健康障害(脳・心臓疾患)が出た場合は、労災認定されます。厚生労働省は以下のように定めています。
簡単に言い換えると、恒常的に80時間以上の残業が続いて健康障害を発すると労災認定されるということです。企業側としてはどれだけ忙しくても80時間以上の残業要求は避けるべきでしょう。
過労死ラインを超える前に転職を考えよう
もし、今の職場で長時間の残業が続いており、このままでは体がもたないと感じているあなた。過労死ラインを超えて体調を崩してしまう前に転職をしましょう。資本となる身体を壊してしまっては元も子もありません。
労働時間・休日等の条件は、労働者にとって非常に重要な問題です。「今の職場、もしかしたらヤバイかも」と感じている人は、転職という選択肢を検討してみてもいいかもしれません。
現職の状況を転職エージェントに相談するのが◎
転職先を探す際は転職エージェントに相談して、ホワイト企業を紹介してもらうのがおすすめです。今すぐに転職する気がない場合でも、多くの人が無料カウンセリングを受けています。
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適正な残業代を支払わないのも違法とみなされる
1日8時間・週40時間の労働時間を超えた場合、企業は労働者に「時間外手当」を支給しなければなりません。残業代の支給は「労働基準法第三十二条の四の二」で命じられているので、未払いは違法となります。
残業代の未払いは、過去2年分であれば請求できるため、専門家などに相談して取り返すのもありです。相談先の詳細は以下をご確認ください。
残業代未払い分の請求に関する相談先
- 全労連労働問題ホットライン
- 労働基準監督署
- 総合労働相談コーナー
- 社会保険労務士
- 弁護士
※残業代・時間外手当は「割増賃金」とよばれることもあります
▼参考資料
「時給×1.25」の計算で残業代を支払わなければならない
残業代は基本時給で計算してはいけません。残業代の計算は以下のように行わなければなりません。
残業代の計算方法
■1日8時間・週40時間を超過→「時給×1.25倍以上」
■1ヵ月60時間を超過→「時給×1.5倍以上」
また、22~5時までは深夜手当(1.25倍)がさらに加算されます。つまり、22~24時の間に2時間残業すれば、「時給×1.5倍以上」という計算式になります。
一度自分の給与明細を見て、適正な残業代が支払われているか計算してみるのもいいでしょう。もし適正金額が支払われていない場合は違法となりますので、会社に請求することが可能です。
▼参考資料
残業代を支払わない「サービス残業」を強要している企業の特徴
残業は1分でも発生すれば、企業には残業代の支払い義務が課せられます。しかし、実際は企業は様々な理由をつけて労働者にサービス残業をさせているのです。
サービス残業を強要している企業の特徴
- タイムカードを定時で打刻させた後にも仕事を強要している
- 仕事を自宅に持ち帰らせている
- 名ばかりの管理職扱いをして過剰な残業を行わせている
- 残業の端数時間切り捨てている(15分未満は切り捨てなど)
これらの残業代が支払われないサービス残業はすべて違法となります。サービス残業を当たり前と思わずに、困ったらすぐに専門機関に相談しましょう。
違法な残業だと認められる場合は罰則が科せられる
残業時間や残業代に関して違法だと認められる場合には、罰則が科せられます。残業に関しては労働基準法32条に該当しますので、罰則は「労働基準法第119条」が適用され、「6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金」と規定されています。
しかし、この罰則が緩すぎるのが違法残業がなくならないひとつの原因だともいわれています。
▼参考資料
残業なしで法定労働時間を守っていれば36協定は不要
違法残業の規制に効果を発揮する36協定ですが、締結が必須なわけではありません。1分たりとも残業なしで、法定労働時間を守っていれば企業は36協定を締結しなくても問題ありません。
しかし、残業なしの企業などはほぼ存在しませんので、実際は締結が必要なものとなっているのです。
残業は1ヵ月で45時間を越えると違法!適切な残業代が支払われているかも確認しよう
違法残業に関する問題を、法律的観点からみてきました。残業時間や適正な残業代を決めるために、36協定が存在しています。36協定に違反すると罰則が下りますので、企業側は注意が必要です。
基本的に残業時間は1ヵ月を45時間以内とし、年間360時間を上限とする働き方をしましょう。違法残業を強制される場合は、公的機関に相談したり、最悪転職を考えたりするのもありです。
法定外時間外労働については、時給×1.25以上の手当の支払が義務付けられています。法定深夜労働(22:00~5:00の間)については、通常の時給の他に、時給×0.25以上の手当の支払、法定深夜労働時間中に法定外時間外労働が発生した場合には、時給×1.5以上の手当の支払、法定休日労働については、時給×1.35以上の手当の支払。法定休日労働については、時間外労働という概念がないため、何時間働いても時給×1,35以上の手当の支払いとなりますが、法定深夜労働の概念はありますので、法定休日労働時間中に法定深夜労働が発生した場合には、時給×1.6以上の手当の支払いが義務付けられています。給与支払の時効は2年となっていますので、給与支払日から2年以内の未払い給与(残業代を含む)は請求することが可能です。